【木村花さん自殺】誹謗中傷について思うこと弁護士が熱く語ります。

さて,5月の最後に衝撃的なニュースが舞い込みました。

参考 木村花さん自殺日刊スポーツ

衝撃的な事件でした。

彼女はこれからの女子プロレス界を背負って立つ人間だと言われていたことからも大きなショックがありました。

そして,その理由はSNS上における誹謗中傷でした。

私もこれまで何度もネット上の誹謗中傷に苦しむ方を見て,私ができることを為し,一人でも苦しみから救えるよう手続を行ってきました。

しかし,そこには制度上の壁がありました。それにより誹謗中傷に苦しむ方を救えないことも多くありました。

そこで,今回は,ネット上の誹謗中傷について弁護士ビーノが思うことを率直に語りたいと思います。

これを見て皆さんが誹謗中傷の加害者にならないことを祈っています。

解説者
  • 品川区で弁護士をしていますびーのです。
  • 弁護士びーのは7年目
  • 弁護士駆け出しの頃から発信者情報開示等は行ってきました。
  • もし困った際は,品川区の弁護士びーのが対応致します👍
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1 誹謗中傷とは?

いわゆる名誉毀損行為(社会的な評価を低下させること)のことを指しています。

このような行為が民事上の損害賠償請求や誹謗中傷に該当することはいうまでもありません。

2 誹謗中傷において刑事手続が機能しない理由

今回,木村花さんが警察に被害届を提出していたかは定かではありません。

ニュース報道によると,被害届や告訴状を提出していなかったのだと推測されます。

ただ,弁護士をしていて思うのは,刑事告訴・被害届は本当に受理されづらいのです。

有名な方(吉村知事に対する脅迫とかはすぐ逮捕されてました)は別として,インフルエンサーレベルでも受理自体かなり難しい。

これはどのような点に理由があるか

  1. 警察のキャパシティに限界があり,全てを捜査することは不可能であること
  2. そもそも一般市民のレベルだと実害が小さいと判断されている可能性があること
  3. 証拠に乏しく,警察の捜査にも時間がかかることから敬遠されている可能性があること

 

このような状態であるため,ネット上での誹謗中傷を刑事手続では解決できないパターンが多いと考えています。

仮に,被害届や告訴状が受理されても,解決までには時間がかかり,場合によっては年単位の時間を要することもあります。

3 誹謗中傷において民事手続が機能しない理由

民事手続においては,損害賠償請求を行うことが主な目的になると思います。

しかし,ネット上の誹謗中傷は,「匿名」であることがほとんどです。

そのため,発信者が誰なのかを,プロバイダ責任制限法に基づき「発信者情報開示請求」を行う必要があります。

ただし,発信者情報開示が裁判手続を経ず,任意に認められることはほぼありません。

基本的には,民事保全手続を経る必要があります。

しかも,民事保全により,発信者情報開示の仮処分を行うためには,数十万円の担保金を積む必要があるのです。

これは,SNSから誹謗中傷がされた場合には,SNS側に1回とプロバイダ側に1回の計2回必要となります。

これでは一般の市民の方に利用しやすい手続であるとは到底言えません。

民事手続も刑事手続と同様に,制度上の不備があり,費用がかかりすぎるという問題点を抱えていたのです。

3 弁護士ビーノが木村花さん事件を通じて誹謗中傷について言いたいこと

(1)木村花さんの場合,損害賠償はかなり高額になる

例えば今回の件でいうと誹謗中傷行為で自殺しているため損害賠償請求が成立するのですが,22歳で亡くなっているため,逸失利益がかなり大きいのです。

これはどういうことか?

基本的に交通事故の裁判で問題になるのですが,逸失利益は,労働可能年齢である67歳までの就労可能年数を考慮して判断されます。

したがって,木村花さんの場合,40年以上の逸失利益を算定する必要があり,しかも木村花さんは有名人です。

かなりの逸失利益,下手をすると億レベルの賠償金が発生してしまいます。

しかも,死亡慰謝料もかなりの金額になります。

数千万円は下りません。

確かに親御さんの悲しみはお金に変えがたいものがあるかもしれません。

しかし,今後の誹謗中傷の抑止力になるからやるべきだと思っています。社会的意義があるのです。

(2)匿名=卑怯

SNS上は,匿名で行うことが前提となっています。

しかし,匿名での誹謗中傷行為は,あまりにも卑怯な行為だと思っている。

なぜなら,相手は名前を出している。でも誹謗中傷する側では名前を出さない。

挙句自分には正義はあると思っていることも問題です。

発信者情報開示請求が容易になり,匿名であることを有名無実化することが求められていると思います。

(3)表現の自由が認められる?

表現の自由という議論があります。

個人的には中傷行為に表現の自由なんてないと思ってます。

表現の自由は,権力者に対する対抗手段として認められてきた経緯もあります。

個人のストレスを発散させるために表現の自由を認める必要はないので,保護に値しないと思ってます。

(4)有名税なんてものはない

「芸能人やインフルエンサーは有名税ってことで叩かれる覚悟で表に出ろよ」みたいな発言も結構見かけます。

しかし,有名人だからと言って叩くのは法律的にも人権的にもなんの根拠もない暴論ですし,論理的には間違いです。

一般的には,個人に言っても有名人に誹謗中傷する言葉を投げかければ,罪は変わらないです。

基本的人権はみんな平等です。

有名人になることで基本的人権が制限されるなどという議論を正当化してはいけません。

(5)誹謗中傷に誹謗中傷をする

ちなみに誹謗中傷したことを批判する人間も結構いますが,それもまた新たに誹謗中傷を産むだけです。

法律に基づいて適切な罰なり損害賠償義務の履行をさせることが大事です。

我々が罰を下すという私刑行為は禁止されてします。

これも憲法で認められている適正手続を経なければ刑罰を課されないという考え方に根付いています。

罰は国が下すべきです。

4 誹謗中傷対策のこれから

まず5月26日のニュースにて,総務省が木村花さんの事件を受け,発信者情報開示請求の制度を改正するという動きを見せました。

これまでも制度改正の動きはあったのですが,更にスピードが早まりそうですね。

参考 ネット中傷 制度改正で対応ヤフーニュース

そして,一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構は,「今般報道されているような痛ましい事態を受けて、これらの問題への対処にあたって、実効性ある取組を行わなければならない、と考えております。そのための議論を全ての会員企 業で行うこととしたうえ、利用者の表現の自由や通信の秘密の保護等を最大限尊重しつつ、 下記の項目をベースに、必要かつ効果的な取組を実施するとともに、今後さらなる対策を検 討するため、SMAJ 全理事をメンバーとした特別委員会を設置することと致します。 」と宣言しました。

参考 発信者情報開示請求に対する対応について一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構プレスリリース

いずれにしても発信者情報開示請求が容易になること,特に海外発のSNSであるTwitterやインスタグラムについて,発信者情報開示がなされることを期待します。

そして,発信者情報開示請求については新たなステップに移行することから,今後も制度改正に注視し,改正が決まり次第,ブログや動画にて解説したいと考えています。

なお,今回の説明については,動画でも行っていますので,ぜひご覧ください。

そして木村花さんに対しては哀悼の意を表するとともに今後同様のことが起きないよう努力することをここに宣言して,本記事を終わりたいとと思います。

ではまた次回の記事でお会いしましょう。

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