【完全解説】賃料・家賃減額交渉のキホン(無料の覚書データ配布します)

賃料・家賃減額 交渉 無料

新型コロナウイルスの影響で賃料が払えない方について,国土交通省が以下のような発表をしました。

参考 国土交通省発表賃料の減額について

そして私のツイッターでもこのようなツイートをしました。

https://twitter.com/bino_bengoshi/status/1257890268306538498?s=20

でも,皆さんこう思っているかもしれません。

バーの店長

「でも減額なんてできないんじゃない?」

私品川区の弁護士びーのが今回様々な文献にあたってみたところ,不可能ではないし,交渉以外の手段もあるということがわかってきました。

また,交渉の場合であっても,ちらほら減額できたという事例も出てきました。

そこで,今回は,新型コロナウイルスの影響により賃料・家賃が支払えない方に対して,賃料・家賃減額までのロードマップを検討したいと思います。

そして,これまで弁護士等が出している論文についても併せて紹介して,皆さんに情報を共有したいと思っています。

今回の記事を読めば,これから賃料・家賃の減額をしようとしている方は

  • 賃料・家賃の交渉においてできること,できないことがわかります
  • 大家さんとの交渉の方法を学ぶことができます
  • そして,交渉に入っている方でもこれからの交渉に役立たせることができます

皆さんの一助になれば嬉しいです。

そして今回は,貸主さんと減額をした際に使う覚書のサンプルを無料で配布します。

さらに無料での賃料減額交渉を受け付けております。

この点については別記事にて解説・紹介したいと思います。

記事を最後までご覧いただくとダウンロードできますので,ぜひ皆さん最後までご覧ください!

解説者
  • 品川区で弁護士をしています。
  • 弁護士7年目
  • 不動産関係の法務は1年目から多数行なっており,一番自信があります。
  • 賃料増減額の意思表示に関する調停や訴訟も多数経験済みです。
  • もし困った際は,品川区の弁護士ビーノが対応致します👍
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  • Twitterはこちら

なお,今回の記事については,調査が進み次第,アップデートを重ねる予定です。

記事が変更されることもございますので,ご了承ください。

目次

1 賃料・家賃の減額は法律的に可能か?

(1)賃料減額の意思表示(借地借家法32条等)

まず,建物の賃料を強制的に変更することができる「賃料減額の意思表示」が今回の新型コロナウイルスの問題点で利用できるかを検討します。

そもそも,借地借家法32条はこのように規定しています。

(借賃増減請求権)

第32条
  1. 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
  2. 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
  3. 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

(借地借家法より引用)

ただし,結論からお伝えすると,新型コロナウイルスの場合に,この規定(契約書に記載があれば契約書の定め)を利用して,賃料を減額することは難しいのではないかと考えています。

私も賃料増減額請求の調停・訴訟を多数経験しているので,わかることがあります。

賃料増減額請求の性質
  • 賃料増減額請求は,恒久的に賃料を変更するための意思表示であること。
  • 新型コロナウイルスによる影響はあくまで一時的な影響によるものであること
  • 固定資産税評価額等から鑑定を行なって,減額するか否かを判断するため,相当程度賃料が下がる可能性は小さい。

以上のとおりであるため,減額が認められたとしても本当に少額だけ認められるに過ぎないため,鑑定費用(50万円以上)をかけてまで,賃料増減額請求を請求を行うメリットは小さいと考えています。

この点に関しては,参考となる弁護士事務所の論文がありましたので,ご参照ください。

参考 新型コロナウイルスの不動産賃貸・管理実務への影響弁護士内海健司先生他

(2)オーナー側から使用を制限された場合

今回の新型コロナウイルスの場合だと,ビルや施設のオーナーから利用停止を要請され,やむなく自粛に追い込まれたパターンがあります。

この場合にも,賃料の減額はできないのでしょうか。

まず,現時点で適用される法律はほとんどの場合が,令和2年4月1日以前に賃貸借契約を締結した場合であると推測できるので,旧民法の適用を前提にお話したいと思います。

この点について,大阪高等裁判所・平成9年12月4日判決においては以下の通り判示され,天災によって,使用収益ができなくなった場合,天災以後の賃料の支払い義務を負わないことが認められた。

大阪高等裁判所・平成9年12月4日判決

 

  • 1.震災により賃借建物が滅失に至らないまでも損壊して修繕されず、使用収益ができなくなった場合には、公平の見地から、民法536条1項を類推適用して、賃借人はそれ以後の賃料の支払義務を負わない。
  • 2.天災によって損壊された賃借建物が修繕されず、使用収益が制限され、客観的にみて賃貸借契約を締結した目的が達成できない状態になったため契約が解除されたときには、公平の見地から民法536条1項を類推適用して、賃借人は建物を使用収益できなくなった時から賃料の支払義務を負わない。

さらに,別の判例では,雨漏りの事例ではあるものの,一部使用収益不能の状態である場合には,賃料の支払い義務はあるものの,減額を請求できると判示した。

名古屋地方裁判所・昭和62年1月30日判決
  • 1.賃貸人の修繕義務の不履行による雨漏りのため賃借建物の一部が使用収益不能の状態である場合には、賃借人は、当然には賃料支払義務を免れないものの、民法611条1項を類推して、賃料減額請求権を有すると解すべきである。

では,新型コロナウイルスの場合はどうでしょうか。

新型コロナウイルスという未曾有の疫病により,物件の滅失には至ってはいないものの,賃借人は使用収益が事実上不能(不可抗力に近いし,反抗もできない)となっています。

その場合,飲食店がテイクアウトのため使用しているが,売上が減っている場合などには,上記の判例は当てはまらないという結果になるかもしれません。

なお,新民法においては以下の通り規定しているため,今回の新型コロナウイルスのように,オーナー要請等により物件が使用できない場合には,減額の請求をすることができる可能性が高いといえます。

改正民法611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)

1.賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

(3)賃料・家賃の未払や未納について

この点については,法務省が以下のような発表をしていました。

参考 ≪テナント家賃の支払いを支援する制度について≫法務省発表

法務省発表 未払い賃料と解除

結論としては,今回の新型コロナウイルスの件で,3ヶ月程度滞納をしても直ちに賃貸借契約の解除事由にはならないということをほぼ認めています。

つまり3ヶ月間であれば,賃料を踏み倒しながら,オーナーと交渉ができるということになります。

この点については,次の交渉時の注意点でもお話したいと思います。

2 賃料・家賃減額の交渉時における注意点

では,実際に賃料・家賃減額の交渉時における注意点・ポイントについて考えていきたいと思います。

いくつか要素をあげてみましょう。

(1)オーナーも辛い

まず,相手方となるオーナーの気持ちについて考える必要があります。

オーナーとしては,現時点で借主である皆さんに退去されるのが一番痛いです。

なぜなら,新しい入居者がこの不況の状態では入る見込みが立たないことや新たに広告費をかける必要があるため,全体として借主に退去されるのはマイナスの可能性があります。

そして,オーナーもローンを組んでいる可能性があるので,賃料が全く入ってこないことは非常に厳しいのです。

ここにオーナーが賃料・家賃の減額に応じてくれる余地が生じるのではないかと思っています。

(2)上から目線は良くない

交渉の際にやりがちなのが,上から目線で「オラオラ」系の対応をしてしまうことです。

払う義務を負っているのは,「借主」です。

その借主が,横柄な態度を取ること自体,常識に反します。

ここは,オーナーと会う際には,虎屋の羊羹を持参して,挨拶に入るくらいの準備は必要ではないかと思います。

オーナーも人です。

気持ちがいい人との交渉であれば応じてくれる可能性も高まります。

(3)弁護士が入った方がいい

最終的に,契約を一部変更することになるので,あとで紛争をさけるためにもオーナーとは合意書を交わす必要があります。

その際,交渉のテーブルに弁護士をつけておくと,なおスムーズな賃料・家賃の減額ができるのではないかと思います。

また,判例の動向や理論的な説明をすることで,同席する可能性のある管理会社も説き伏せることができると思っています。

やはり不動産の法務に長けた弁護士を用意できることが減額交渉の鍵になってくると思います。

3 覚書データの無料配布

今回,貸主と借主との間で締結しなければならない覚書についてサンプルを2パターン作成しました。

ぜひ皆さんの交渉に役立てていただければと思います。

こちらについても随時アップデートができればと思っていますので,Twitter等で告知します。

4 まとめ

今回,賃料の減額については,各国で様々な措置がなされています。

参考 各国の賃料に対する措置は? 新型コロナウイルスNHKニュース

特に賃料の猶予に関する方法については,覚書に反映させていくことが可能だと思っています。

今後の事例の積み上げに期待しています。

そして,国内での対応についても政府による案が出されています。

参考 固定資産税の全額免除も、賃料猶予でオーナーにメリットは楽待新聞

こちらについては,決まり次第,別の記事にて解説します。

さらに,最初にお伝えした品川区の弁護士びーのが対応する「家賃減額の交渉無料サービス」については,別の記事でお伝えします。

では,また次回の記事でお会いしましょう。

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